子供の野球に月々コーチングフィーを支払うのはもったいない? エージェントフィーなどもできるだけ安く済ませたい? アドバイスにいちいちアドバイザリー料は支払いたくない? インターネットなどで情報が無料で手に入るようになったり、新型コロナウィルスでできるだけ支出は減らしたいなどと、分からないでもない理由はあります。しかし、本来、商品やサービスに対して代価を支払う事は当たり前のことです。今回はそのようなことについて述べようと思います。
まず、私が以前コーチしていた少年野球などについてですが、私の場合は息子が私のチームでプレーしている為に、私は選手に対してチャージしていないが、それ以外でコーチングするとしたら、やはりサービスに対する代価として1時間で数百ドルチャージするべきでしょう。私自身はビジネスや投資での収益の方が割りに合うために、チャージしてコーチングすることは現在行っていないですが、もしそうするならきっちりとチャージするでしょう。その方が私自身きちんとした仕事をするでしょうし、コーチングを受ける側としても金額に見合ったサービスを受けようと一生懸命になるでしょう。
野球のエージェントフィーについては、まず第1にエージェントの中で仕事をできる人を選ばなければなりませんが、選んだらフィーをケチるのではなく、きっちりとした仕事にはきっちりとした報酬を支払います。目先のお金を節約する事より、将来長きに渡って自身が得をする事を考えます。
エージェントに関連する話で言えば、例えば収益用不動産を売るとして、不動産エージェントに仕事を頼めば、通常売る側は6%のエージェントフィーを請求されます。その場合によくやる間違いは、オーナー自身がエージェントフィー削減の為に自分で売るというのがあります。売り手市場で誰が売っても不動産が売れる場合は別として、現在のような状況ではプロのエージェントでも売ることは難しいのに素人のオーナーが売ることはもっと難しくなります。そういう場合は大手のやり手のエージェントに通常のフィーよりも多めに払ってでも売ってもらうほうがよいのです。自分が不動産エージェントなら、エージェントフィーを4%に下げてくれと言うクライアントの物件と、8%でいいから早く売ってくれというクライアントの物件と、どちらに対して一生懸命になるでしょうか?
インターネットの情報にしても同じような事が言えます。これだけ情報が溢れている時代に無料の情報をしらみつぶしに何時間もかけて探すより、代価を支払ってでもしっかりした情報を得る方が長い目で見て自分のためとなります。不動産や株式に関しての情報は無料で手に入るものが多く、私もある程度は利用しています。しかし、それとともに有料の、しかもかなり高価な情報も買っていました。
自分のビジネスや仕事の場合はこの考え方は当たり前と思うかもしれないです。しかし例えこれが趣味の域でも私は無料と有料の情報を上手く組み合わせます。ゴルフの事例で言うと、以前はゴルフコースの情報や、ゴルフクラブの情報などを雑誌や有料ウエブサイトで仕入れていました。無料のサイトももちろん良いものもありますが、だいたいは時間の無駄となってしまう事が多いです。そして無駄なクラブを買ってしまったり、つまらないコースで無駄なお金を使ってしまうこととなります。
そして最後にアドバイスについてですが、よく私達がいうのは「タダより怖いものはない」です。無料の耳寄りな情報などというものは、この世の中にほとんどないのです。確かに有料の情報でも怪しいものはたくさんありますが、本来正確な情報は有料のものが多いと私は思っています。野球の話で言えば、たくさんのベースボールエージェントと名乗る人たちがいて、選手に対して様々なアドバイスをあげようというのですが、実際にそれらのアドバイスが的を得ているかどうかは疑問です。私がメジャーでプレーしたいとメディアなどで発表した時も、様々な人がたくさんのアドバイスをくれましたが、そのほとんどは今になって考えるといい加減なものでした。特にその当時は、野茂投手もメジャーに渡っていなかったわけで、マッシー村上さんしか日本人でメジャーのマウンドに上がった人はいなかった訳です。それなのに長谷川はメジャー行きを考え直した方がよいとか、日本で十分稼げているのにメジャーに行く必要はないなど、ネガティブなアドバイスがたくさん返ってきました。
私が受けたアドバイスの中で良かったのは、私の立命館大学のOBの弁護士の方からのものでした。彼は野球の専門ではなかったのでメジャーでプレーするか、しないかのアドバイスはしなかったですが、行くことについてどのようにオリックス球団と話し合っていくべきかのアドバイスをくれました。それはもちろん有料のサービスです。2年間、様々な人の意見を聞きながらメジャー行きが実現しましたが、この有料サービスのアドバイスが1番だったように思います。
私は、子供のコーチングは無料で行っていましたし、メジャーに挑戦する選手たちに対するアドバイスなども一部を除いて無料で行っていましたが、それは当時私自身が勉強段階だと考えているからでした。しかし、それも野球を引退して十数年が経ち、ビジネスや投資関連、自己啓発やメンタルトレーニングなど、それにもちろん野球関連の経験をつんできたことから、今後は有料のビジネスとしてのアドバイスを行おうかとも考えています。その方が、私自身が真剣に取り組むつもりがあるのと、読む側もしっかりと読んで勉強して欲しい意味を込めています。
情報社会になって様々なものが無料化されても有益な情報は有料であり、その代価を支払うべきであると私は考えます。また、子供に対して塾などでお金を費やすのと、スポーツでしっかりした考え方を植えつけさせるためにお金を費やすのも同じ事です。日米、特に日本ではコーチングに対して代価を支払うというシステムが確立されていないです。そのようなコーチングのシステムの構築も日米で必要だと私は考えます。そしてアドバイスについてもアメリカでは訴訟によってお金を取ることばかり考えている弁護士と、日常生活を円滑に行うためのシステム作りのために存在する弁護士がいますが、後者のような(私にアドバイスをくれた大学OBのような)人たちが増えて、代価を支払えばきちんとしたアドバイスを受けられるような社会になってほしいし、私もそういう社会になるようなシステム作りに励みたいと思います。
(本コラムは、2010年に執筆した内容に加筆・修正しています)
長谷川滋利