
私が真剣にメンタルトレーニングに取り組んだのは、日本のプロ野球で3年目のシーズンを迎える頃でした。2年目のシーズンに2年目のジンクスなるものにはまり、3年目のシーズンをどうしても良いシーズンにしたいと考えて取り組みました。そのおかげでその後も精神的に安定したプレーができるようになりました。同じ事を自分の息子に教えたいと以前から考えていましたが、小学生・中学生レベルではなかなか理解できないと考えてメンタルトレーニングは行っていませんでした。しかし、高校生になった頃に、そろそろかなと考えました。その息子にメンタルトレーニングが必要だと感じ出した理由と、この年代の子供にどの程度のメンタルトレーニングをさせるべきかを述べたいと思います。
久々にメンタルトレーニングの本「メンタル・タフネス」ジム・レーヤー著を読んでいると、これまで何度も読み返したにも関わらず、様々な発見をした。それは私自身がメンタル的にその読み返していた時期よりも成長していること、着目する視点が以前とは変わってきていることなどから生じたのでしょう。大事な部分はほとんど暗記するぐらいに読み返してましたが、その他の枝葉の部分は飛ばし読みなどをしていたこともあり、今ゆっくりと読み返すとまた楽しく読むことができます。
読みながら、当時もうすぐ14歳になる息子もメンタルトレーニングが必要な時期なのかなと考えました。毎日、息子は2時間は私のオフィスにあるバッティングケージでバッティング練習をしているにもかかわらず、チームでは打率は下位の方でした。確かに15歳以下のチームの中で息子は一番年下です。ですが、普段のバッティングを見ていても技術的に皆と比べて劣っているとも思えません。1番の年上とは2才近く離れているが、体の大きさもそれほど違いはありません。私が察するところ、「自分はこのチームでは一番年下だ」あるいは、「自分の父親はメジャーリーガーだったから、打たなければいけない」などの精神的な劣等感や、プレッシャーが成績に現れているのかもしれないと考えました。後、口では野球が好きだといっていますが、試合中本当に好きで野球をやっているように私には見えませんでした。何かうまくプレーしなければならない、とかミスはいけないと必死さばかりで楽しさを表に出してプレーしているところが見られませんでした。
確かに皆よりも練習も良くするし、もちろんメジャーリーガーだった私がコーチをしていることなどからも、諦めたり野球を辞めたりしない限りはいつか急激に伸びる時が来るのは分かっていました。しかし、そのいつかが少しでも早いほうがよいと考えました。そのいつかを早くするためにもメンタルトレーニングは必要でしょう。
これまで私がバイブルとしてきたメンタルトレーニングの本を一緒に息子と読み、私の体験談を入れながら勉強させました。まずは野球を楽しむということ。今の息子を見ていると結果が出てはじめて「喜ぶ=楽しむ」という結果主義になっています。そこをとにかく野球をやっていて楽しくて仕方がないというようにさせたかったのです。楽しんで結果を出す。最初はすぐにそうは思えないでしょう。そこでまずやらせようと思うのは、とにかく楽しい「フリ」をさせること。もともと野球は好きなはずだから、これはそれほど難しいことではないでしょう。とにかく楽しんで野球をやる。それが周りにも見て取れるぐらい。ただそれは、もちろんチャランポランにやったり、誰かとべちゃくちゃ喋ったりすることではありません。とにかく寡黙に野球をやりながら楽しむのです。
後は、自分が今集中しなければならないことに集中させました。結果に集中するのではなく、アウトサイドにファーストボールを投げ込む、強い当たりをセンターに打ち返す、などです。それと同時に私が勉強してきた様々なメンタルトレーニング技術を学ばせたかったですが、まずはシンプルにメンタルトレーニングの存在を分からせることから始めました。
全くこれまで取り組んだことがない選手が、メンタルトレーニングを始めると少しパフォーマンスが落ちます。それは今までよりも違うことを考えたり、違うプロセスで試合に臨むようになるからです。そういう意味では、当時の息子の年齢、14、15歳ぐらいからメンタルトレーニングを始めるのが実は好ましいのではないでしょうか。
息子へ行ったメンタルトレーニングも含めて、私や他のプロ野球選手の経験や様子も踏まえて、私が今月からスタートさせるオンラインサロン 「長谷川滋利のメンタルトレーニング」で詳しく解説していきます。スポーツ選手を目指す子供さんをお持ちの方はもちろんですが、そうでなくても子供に早い時期にメンタルトレーニングの大切さを教えることは大事と思います。あるいはビジネスにおいて、自分の部下を教育する時にもこのメンタルトレーニングは使えると思います。参考にしていただければ幸いです。
(本コラムは、2010年に執筆した内容に加筆・修正しています)
長谷川滋利
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