ピッチャーにまず私が伝えること

野球を始めたばかりの小学生からプロの選手まで、ピッチャーに私が伝えている基本的なことを今回は述べたいと思います。技術的なのはもちろんですが、メンタル的なものを含めてシンプルに分かり易く説明しようと私は心掛けています。

どのレベルにも言えることですが、まずピッチャーは「ストライクを投げる」という事が大前提です。これはもともと野球の歴史の中で、今で言うソフトボールの「スローピッチ」のようにピッチャーは緩い球で相手が打つまで投げ続けていました。もともと野球はピッチャーが投げ、バッターがバットを振って始めるスポーツだったのです。上のレベルになればなるほど、状況によって様々なことを考えて投げるようになるので、この「ストライクを投げる」ということを忘れてしまいます。「このバッターは4番バッターで1球目からどんどん振ってくるから、まず1球目はボール気味の球で様子を見よう」などという考えは典型的な間違いのパターンです。バッターはピッチャーが投げる球を見れば見るほどタイミングが合ってきますから、余程あまい球、相手の得意球、得意コースでなければ1球目を打ってくれた方がアウトになる確率は高くなります。

パワーピッチャーでも、もちろんコントロールピッチャーでもコントロールが良いに越したことはありません。ど真ん中に投げて空振りを取れるピッチャーは良いことです。しかし、それでも上のレベルになるしたがって、球が早いというだけではバッターを抑えることができなくなります。また、アマチュア時代にパワーピッチャーだったが、プロに入ってそのスピードに頼るあまり結局結果を出せなかったというピッチャーが多いのも事実です。つまり、ピッチャーはコントロールが良くなければどの道、先はないということです。

ではコントロールの良いピッチャーになるにはどうしたらよいか? 

コントロールはメカニック(ピッチングフォーム)に比例します。いつも同じメカニックで投げれば自ずとリリースポイント(球を離すポイント)が分かってきます。例えばアウトサイドの低めに10球続けて投げようとする時に、自分自身のフォームが10球とも違っていてそこに投げる事はたいへん難しい。いつも安定した同じフォームで投げ続けることによって始めてコントロールというものはついて来ます。

次に同じフォームで投げるためには、まっすぐ立って投げるという事が大事になってきます。まず、投げる直前の始動のポジションが毎回違っていては同じフォームで投げることは難しいです。毎回、同じように振りかぶる、あるいはセットポジションに入るという動作が出来るようにします。私が良くやったのは、鏡の前に立ち(鏡がなければ大きな窓の前でも良い。特に夜は窓が鏡代わりとなる)自分がまっすぐ毎回同じように立てるか映し出します。そのまっすぐ立つという動作も人によって解釈は様々です。日常の生活ではまっすぐというと直立するが、野球でまっすぐに立つという動作は、どちらかというと少し前かがみなることを言います。メジャーリーグのピッチャーがセットポジションに入る時にグラブを顔のあたりに持ってきてちょっと前かがみになっている、あの状態です。もっと分かり易く言えば、ボクサーがファイティングポジションに入るあの状態です。あの少し前かがみの状態が一番体に力が入ります。日本のピッチャーはどちらかというとちょっとそり気味にセットポジションに入るが、喧嘩の時に背中をそってパンチしようとする人はいないでしょう。それだと強いパンチが打てません。出来ればボクサーのファイティングポーズのように立つことが望ましいです。大学生レベルになってからわざわざ治す必要もないかもしれませんが、小学生、中学生レベルではまだ完全に癖がついていないから、このボクサーフェィティングポジションのまっすぐ立ちがいいでしょう。

この最初の毎回同じようにまっすぐ立つという動作を行うだけでも、コントロールは飛躍的によくなります。その次に大事なのはフィニッシュ。つまり投げ終わりです。このフィニッシュも毎回同じでないといけないです。できればキャッチャーの方に向かって体が流れるのが良いです。メジャーリーグを見ていると、たくさんのピッチャーが右利きならファースベースサイドにバランスを崩したようにフィニッシュしています。左利きならサードベース側。メジャーがやっているのだからこれが正しいと思うのは間違いです。やはりフィニッシュはホームベースの方にまっすぐに体重移動される方が良いです。フィニッシュに関して言えば、日本人の方が正しいピッチャーが多いです。腕は右利きのピッチャーならば左腿の真横に腕を振り切るのが正しい動作です。いつもその位置に来なければいけないのです。インコースに投げる時は少しフィニッシュが変わります。あるいは高めに投げる時、ファーストボールと変化球を投げる時でこのフィニッシュの位置が変わるのは正しいフォームではありません。ファーストボールと変化球を投げ分ける、低目と高めに投げ分ける、あるいはインサイドとアウトサイドに投げ分けるには、フォームで調整するのではなく、リリースポイント(球を離す位置)で調整するのです。

もう一度、今回述べたことをおさらいすると、まずは、ピッチャーはコントロールが一番大事ということ。つまりピッチャーはストライクを投げて「何ぼのもの」ということです。これは少年野球からメジャーリーグまですべてにおいて言えます。次にコントロールを良くするには常に同じフォームで投げなければならないということ。この基本は常に覚えていなければならないです。特にレベルが上がってくるとこのシンプルな事を忘れがちになります。高校野球や大学野球のレベルの息子を持つ両親なら、その息子がスランプに陥っている時に、一番に見るところはストライクを投げているかどうかということです。このシンプルなアドバイスを与えるだけでスランプから脱したり、飛躍的に伸びたりすることもあります。

(本コラムは、過去に執筆した内容に加筆・修正しています)

長谷川滋利

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