前回のホームパーティーに続き、今回はメジャーリーガーの誕生日にはどのようなイベントやパーティーを行うかについて述べたいと思います。特に家族の誕生日において、日本とのカルチャーの違いがよく分かると思います。
現役の頃は日本プロ野球、メジャーリーグともに誕生日の時はテレビのアナウンサーがその様な話をしたり、あるいは選手名鑑には誕生日などが載っているために、ファンからの「おめでとう」の言葉があったりします。野球選手にとって年を取るということは、引退が近くなることでもあるからそれほど「めでたい」ことでもないのですが、それでも何か起こるかもしれないと思って少しはワクワクしながら球場に行っていたものです。
私がメジャーでプレーする前に、野茂投手が先にメジャーでプレーしたのですが、彼の著書の中で、ドジャースのラソーダ監督から誕生日にクラブハウスでサプライズがあったことが記してありました。私のメジャーでのルーキーの年の8月1日、野茂選手のように何かサプライズがあるかと期待していましたが、それほど飛びぬけた選手でなかった私には特に何か用意してあるわけではありませんでした。昔、私の著書でも述べたことありますが、メジャーで本当に認められたなと感じたのは、2年目のシーズンも終わりの頃でしたから、当時はやはり私はまだメジャーリーガーとして認められてなかったのでしょう。もっとも、当時のエンジェルスのクラブハウスではそのような誕生日を祝うイベントはあまり見たことがありませんでしたが。
マリナーズでチームメイトだった大魔神こと佐々木選手は、誕生日がスプリングトレーニング中ということもあって、日本人記者の皆さまからケーキと共に歓迎を受けていたのを、私がよく茶々を入れに行ったことを記憶しています。しかし、それはシーズン前のリラックスした時期であるためにできることなのかもしれません。イチロー選手がそのようなことをしてもらっているところを私は見たことがないですし(もしかしたら、ポストシーズン中に誕生日を迎えるからかもですが)、私の8月1日に限ってはシーズンも佳境を迎えているから、それどころではないといえばないのですが。
日本プロ野球のオリックス時代は、キャンプ中でも、シーズン中でも自分の誕生日を発表すると、ピッチングコーチから特別に多めのランニングをプレゼントされます。その様な理由からできるだけ誕生日を隠していたことを記憶しています。それでも、練習中にファンが「長谷川さん、誕生日おめでとう」などとお祝いの言葉を貰おうものなら、周りの選手からの笑いと共に、ランニング増量となったものでした。それはそれでよい思い出です。
メジャーリーガーはといえば、先ほども述べたように時期によります。選手によってはホームパーティーのようなものを開いて、選手やコーチなどを誘ったりしますが、それがオフシーズンであれば、選手は日本のように球団がある土地に住んでいるわけではないので招待できないですし、シーズン中の場合、前半戦ならよいが、後半戦はやはりパーティーなどを行うのは少し気が引けます。メジャーリーガーにとって一番良い時期の誕生日はやはり佐々木選手のように2月か3月のスプリングトレーニングの時期でしょう。それなら、パーティーはトレードやフリーエージェントが多いチーム内の顔合わせパーティーにもなるし、普通スプリングトレーニングには家族も一緒であることが多いため、チームメイトに好かれる絶好の機会となります。
私の場合は、ホームで誕生日当日を迎えた場合は、パーティーもなしにファンに「おめでとう」を言われるのがせいぜいの楽しみで、その週末に妻がファンシーなレストランで祝ってくれるのが楽しみでした。やはりシーズン後半の大事な時期にパーティーは気がひけました。逆に遠征先の場合は、選手仲間でディナーパーティーということはありました。特にシアトルに移籍してからはワインが好きになったので、周りのワイン好きの選手とディナー&ワインということもありました。
選手本人のパーティーはこれ位ですが、こと自分の息子や娘となると、かなり派手なパーティーを開くメジャーリーガーが多いです。私もそれにもれず、息子の誕生日は9月上旬だが、数十万円もするスイートルームを貸しきってパーティーを開いたこともあるし、ゴルフのカントリークラブのパーティールームでパーティーを開いたこともあります(現役中はほとんど妻の仕事となっていましたが)。私が引退した直後は、セーフコフィールドを借りてパーティーをしました。私がいつも座っていたブルペンに息子とその友達10数人を座らせて、記念撮影をしたり、ダッグアウトに座らせて写真を撮ったりと、かなり贅沢なパーティーを開きました。他のメジャーリーガーも、盛大にホームパーティーを開いたり、私のようなやり方をしたりしていました。やはり、遠征などでシーズンの半分家を空けるため、そういう時ぐらいは盛大にしてやりたいという親心です。
メジャーリーガーにしても、そうでない人にしても誕生日は何か特別な日には違いありません。プレゼントを貰って、ケーキを食べて、大人ならちょっとおいしいワインでもあけて気分もよくなって。そして、自分自身を見つめなおすのにも良い機会です。私の場合はいつも元旦に色々と目標を立てますが、自分の誕生日である8月1日は、それらを見つめ直す良い時期です。元旦から8ヶ月経った今年、自分の思い通りの年になりそうかどうかなどと。まあ、めでたい日だからそこまで考えなくても、素直に祝うだけでも良いのですが・・・。
(本コラムは、過去に執筆した内容に加筆・修正しています)
長谷川滋利
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