スポーツ選手にとって安定したプレーをするためにも歯は大事です。メジャーリーグの各チームは、2月に始まるスプリングトレーニング中に健康診断と共に歯の検診も行われます。それらは虫歯などがないかどうか調べる事が目的で、シーズン中に支障をきさすものは、例え歯の治療のような小さい事でもシーズン前に行っておくという目的です。
その時に、もちろん歯並びについても相談できます。日本人と違うところは、アメリカ人は歯並びに非常に気を遣う点です。私の息子もそうでしたが、小学校も高学年になるとほとんどの子供は歯の矯正を始めます。それらは、虫歯治療専門の歯医者ではない別の歯科医である矯正歯科医師のところで行われます。歯の矯正はその子供の歯の具合にもよりますが、普通で1年ぐらい、長くて2年ぐらいかかります。大体12歳から15歳ぐらいまでには強制しているワイヤー(アメリカで歯ブレスと言います)を取り外します。その後も半年に1度は矯正歯科医師に診察してもらい、歯並びの状態が良いかどうかを確かめます。最近ではブレスが取れても、リテイナーという取り外しのきく矯正器具を寝る時などは歯にはめて寝るようにしている人も多いようです。
この様な子供時代からの歯への気遣いがメジャーリーガーにも好影響を及ぼしています。虫歯にならないというような事は当然のことで、常に歯に気を遣う、食事の後は昼でも歯を磨いている選手は多かったです。それに日本ではほとんど見ることのなかったフロス(日本では歯間ブラシのようなもの)で歯を磨いた後に残った汚れを落とすものも使っています。
私もメジャーリーガーたちの影響から歯を大切にするようになりました。もともとそれほど歯並びは悪い方ではありませんが、歯は朝と夜に簡単に磨くだけでしたから歯茎はあまり綺麗ではありませんでした。しかもピッチャーをやっていて常に歯を食いしばる為に、歯や歯茎に負担がかかり虫歯にもなりやすかったと思います。それが、アメリカに渡ってからはほとんど新たな虫歯を持つことはなくなりました。歯医者には虫歯治療に行くのではなく、半年に1回クリーニングに行くだけとなりました。そこでも虫歯にならないために、あるいは歯垢をためないためにどのように歯を磨いたらよいかなどアドバイスを受けたりもします。野球を辞めた今でもその癖で、食べた後は常に歯を磨き、フロスも必ず行うように心がけています。
私が日本でプレーした最後の頃は、マウスピースのような物をカスタムメイドして試合中にはめている選手もいましたが、私は慣れるのに苦労すると思い使いませんでした。歯並びの悪い選手なら必要かもしれませんが、アメリカの選手はほとんどが子供の頃にそれらを矯正して治していますから、必要ないでしょう。しかし、メジャーリーグでも貧しい地域で育った選手や、南米出身の選手などはそのような矯正を受ける事は出来ず、歯並びがかなり悪い選手もいます。また、私が一緒にプレーした南米の選手の中にはそれまで歯医者に1回も行った事がなく、健康な歯よりも虫歯の方が多かったという選手もいた。その選手は1ヵ月半のスプリングトレーニング中、ずっと歯医者通いだったことを覚えています。
先ほども言ったようにアメリカの貧しい地域の人々や、南米の人たちは歯並びが悪くても仕方がないと思うのですが、日本でこれだけ歯の矯正システムが遅れているのを私は不思議に思います。綺麗に歯が並んでいると見た目もいいですし、それ以上に健康にも良いかと思います。スポーツ選手は当然力を出す為に歯並びが良い事が必須ですが、一般の人でも普段歩いたり運動は行うわけですから、歯並びを良くしたり歯のことを考える事は大事だと思います。アメリカ、日本は戦後1、2位を争う先進国(今ではまたかなり離されてきました)でしたが、なぜか歯に関してはかなりアメリカに遅れをとっているという感じがします。
(本コラムは、過去に執筆した内容に加筆・修正しています)
長谷川滋利
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