力の加減

野球にしても、ゴルフにしても、全力でプレーしなければいけないと思い込む人は多いものです。それは何もおかしいことではありません。人間は狩猟時代から窮地に立たされると体に力が入るようにできています。というのも、体に力を入れることによって何かあった時(例えば、獣に急に襲われるなど)に、自分の体を守ることができるからです。

野球のボールが飛んできた時、あるいはゴルフボールが飛んできた時に、周りの人が「危ない」とか、「ファー」と言って知らせますね。それは知らせることによって、当たりそうな人が体に力を入れることによって、もし当たったとしても大怪我を防ぐ可能性があるからです。ボーっと立っているのと比較すると、実際にかなり重症化する率が下がるらしいです。このことからも分かるように、人間は何かあれば、自然と体に力が入るようにできているのです。

しかし、現代社会で獣に襲われる可能性は低いですね。ただ、車の運転で危険を察知した時や、歩道を歩いている時に車が接近してきた時などは、やはり体を硬くするのがいいでしょう。しかし、スポーツでのピンチの場面や、チャンスの場面で力を入れすぎることは気をつけなければなりません。先ほどから述べているように、まずそういう場面では、人間は力が入るものだと知ってください。

その上で、野球のバッターでは、バットのグリップを普段よりもゆるく握る。ピッチャーだったら今から投げようとするボールを今よりも軽く握る。ゴルフでは、クラブを握るグリップを少し弱める。このようにアジャストする必要があるでしょう。特にゴルフでは、遠くに飛ばしたいと思うなら、スイングする前は、グリップを弱く握る方が、ヘッドが走る為に飛距離が伸びます。

私は、日本のプロ野球時代は、脱力投球なるものを編み出しました。それは、もともとは、緩いカーブを投げる時に他の球種に比べてフォームが緩むことから、それならば、真っ直ぐも、スライダーも、シンカーも全部フォームを緩めて投げようという、逆転の発想から思い立ったことです。おかげで、脱力投法を始めて体の力が抜けて、かえって真っ直ぐは走るようになり、そのシーズンは12勝しました。

ゴルフでは(多分、野球のバッティングでも同じだと思います)、グリップの強さが分からなければ、まず、思い切り強く握って打ってみて、次に思いきり弱く握って打ってみてください。次にその間ぐらいで握って打つという具合に強さを変えていくと、自分の一番良いグリップの強さが分かると思います。そして、試合や、調子が悪い時は、ほとんどの場合、グリップの強さは普段よりも強くなっていると思います。そういう時は、いつもより軽く握るようにした方が良いでしょう。

グリップの強さは、普段、家にいる時にいつでも調整することができます。それは野球でのバッターが、バットを握ったり、投手がボールを握ったりするのも同じです。例えば、鉛筆やペンを握る時でも、強く握ったり、弱く握ったりして、強さを加減する練習をしてください。また、今自分はどれくらいの強さで物事を行おうとしているか感じてください。このように練習、特に強さの加減は、練習場ではなくても練習できます。普段の生活からその競技のことを考えていると、他の選手よりも上をいけますし、忙しいビジネスマンでも上達できる可能性は上がると思います。