「セルフ2にセルフ1を邪魔させない」

人は、頭の中で、自分(セルフ1)と自身(セルフ2)が会話する。セルフ1は、セルフ2がきちんとボールを打てるとは信じていない。その不信感が満足するまで、セルフ2に言葉で指示し、命令に従わせようとする。ショットに自信がある時は、比較的セルフ1からの指示は少なく、セルフ2は良いプレーをする。調子の波に乗り切った時は、頭の中では指示や命令が全くない。ゾーンに入った状態はこの感じ。

セルフ1を黙らせ、セルフ2に全てを任せると、プレ−や習得能力は格段に向上する。セルフ2はセルフ1が評価するよりもはるかに優れた競技能力を通常は持っている。指導するときも同じで、生徒のセルフ1に技術的なレッスンを施さず、セルフ2の潜在能力に学ばせた方が、何倍も習得が早く、お互いイライラすることもなかった。私の子供たちへの指導の際は、技術的なことよりも、タン、タンと言ってリズムを取らせたり、テンポの事ばかりを指導しました。

インナーゲームの著者ガルウェイは「セルフ1は合理的で分析屋の左脳であり、セルフ2は直感的な右脳のことだと早合点する人も多い。しかし、これは全く別次元の話で、私から見れば右脳も左脳も肉体の一部で、強いて言えば両方ともセルフ2なのです。人間の組織や本能を、神経部分を含めて私はセルフ2と呼んでいる。セルフ1はこれと対照的に、人間のどこにも存在しないものだ。それは自身を妨害する心理的な「現象」であり、右脳や左脳を含めた本能の作業を妨害する存在だ。」と言っています。自分はできないのではないか? という自己不信は、ゴルフ、野球、テニスなどのスポーツだけではなく、算数のテストの時も、あるいは遊びでのカラオケなどでも現れる自分の内側の現象です。しかし、何かに心が釘付けになって集中している時は、妨害作業は最小限に抑制され、頭脳は本来の脳力をほぼ限界まで発揮することができます。セルフ2を妨害するセルフ1の活動をいかに抑制するか、が全てになります。一旦セルフ1を何かに没頭させると、セルフ2への妨害は劇的に減少し、人はたちどころに本来の能力を発揮するようになる。

セルフ1に、セルフ2(自身)を邪魔させない方法をこれから考えていきましょう。