メジャーリーガーのホームパーティー

以前、私がコーチしていたチームのトーナメントが行われましたが、午前中のゲームであったのと、次の日の準決勝のゲームが夕方からのゲームということで、私のカリフォルニアの自宅に、他のコーチ2人とその家族を招待してパーティーを行いました。今回はアメリカでの一般的なホームパーティーと、メジャーリーガーのホームパーティーについて話したいと思います。

私がメジャー移籍した頃は夫婦共になかなか余裕がなく、自宅に人を招いてパーティーをするということがなかったのですが、シアトルでプレーするようになってから、あるいは引退後は毎日のように近所のアメリカ人ファミリーとホームパーティーを行っていました。特にシアトルで最初に買った家のコミュニティーは10数件しかない小さいコミュニティーだったので、皆が仲良しで「アメリカ独立記念日」「ハロウィーン」「サンクスギビング」などナショナルホリデイの日は、持ち回りでパーティーを行っていました。その当時、私達家族が行った一番大きなホームパーティーは、隣の家の主人がNFL(プロフットボール)を引退した事を祝うパーティーでした。まずは、私の妻が作ったアプタイザー(前菜)をつまみながら、シャンペンを開けてお祝い。通常アメリカのパーティーでは5時から始めるというと、少し遅れて集まりだす。ホスト役の家の準備が整っていないとバタバタするために気を遣うのです。日本ではきっちりと時間通りに、あるいはその時間よりも少し早めに着くのが礼儀正しいとされるかもしれないが、アメリカではその逆だ。その上、人によってはその遅れる時間が10分であったり20分であったりとまちまちなので、通常は来た人から前菜をつまんでドリンクも飲み始めます。

私たちもよくカジュアルなホームパーティーに誘われますが、その時はどの程度の規模なのか? 誰が来るのかなどを聞いて、人数が多い場合はパーティーの中盤に顔だけ出すということがよくあります。自分たちがそのパーティーの中心的存在なのか、人数合わせに呼ばれているのか、よく確かめてから参加します。もちろんお土産も忘れずに。通常は私はおいしいワインを持っていきます。

このようなアメリカの近所付き合い的ホームパーティーの他に、私はメジャーリーガーが主催する大きなホームパーティーにも何度か出席したことがあります。エンジェルス時代はスプリングトレーニング中にチームメイトのティム・サーモンがアリゾナに自宅があるということで、チーム全員を招待したビッグホームパーティーが開かれました。私と妻もそれに参加しましたが、彼の家はとんでもなく大きく、私がその当時一番欲しかったホームシアタールームも持っていましたし、ビリヤード台やピンボールマシーンが置いてあるゲームルームもありました。それらの部屋には自由に行き来できるようにしていましたし、パーティーは誰かが仕切って進むわけでもなく、アメリカ式のオープンハウス方式で行われました。とにかく食べて飲んで話してだけのパーティーです。ティム・サーモン夫妻は日本から来たばかりの私達夫婦を他のゲストより時間をかけて家の中を案内してくれたりしたのを今でも覚えています。入団した当時はつっけんどんで面白みのない奴だと思っていましたが、このパーティー後は彼と話す機会が増えたことは確かです。

マリナーズ時代ではジェフ・ネルソンの自宅にチームのメンバー殆どが招待されたことがありましたが、その時は子供達も参加のプールパーティーという感じでした。そういう場合は、子供達のためにピエロを呼んだり、ベビーシッターを雇ったりと、子供達と大人の行動が別々になります。子供達がプロの仕切りによって遊んでいる間に、大人たちは飲んだり食べたりしながら、親交を深めます。その時は、ジョン・オレルド夫妻と一緒のテーブルに座り、色々な話をしたことを覚えています。彼の面白い話を聞いたり、彼ら夫妻が私達夫婦に日本の生活や野球のことを聞いてしたりして盛り上がりました。その時も、それ以来ジョン・オレルドとはクラブハウスなどで話す機会が増えました。

このようなホームパーティーはチームが一丸となるためには必須のイベントであると思います。特に新しくチームに入った選手にとっては、チームメイトの違った面を見る絶好の機会です。というのも球場ではやはりプロですから野球に集中して本来の彼らの良い面を見られないこともあるのですが、家族の前だとその態度は急変します。そういうパーティーで性格の良さを見た後は、少々のことがあっても「まあ、彼は本当はいい奴だから許そう」というようになります。

日本の「飲みニケーション」も悪くないのでしょうが、家族を含めたホームパーティーの方がその人の違った局面を見ることが出来てよいと思います。

最後にアメリカでの日本人のパーティーについてですが、私はマリナーズ時代、アリゾナのイチロー君が借りている家でのパーティーに行ったことがあります。イチロー君夫婦を含めた5人のこじんまりしたパーティーでしたが、弓子夫人がフレンチのコース並みに、前菜からデザートまで6皿ぐらいの料理を順番に運んできてくれました。私がワインが好きということを知っていて、イチロー君はその当時それほど飲まなかったのですが付き合って一緒に飲んでもくれました。その間、イチロー君はいつものように私に対してカジュアルな喋りでしたが、それに対して弓子さんが気を遣いながらイチロー君の言葉を補足するというような気の利いた会話と共に、楽しい時間を過ごしたことを覚えています。私たち夫婦もよくこのようなスモールパーティーを行いますが、こちらの方が日本人らしい細やかな気遣いのパーティーが出来ます。アメリカ人相手にはアメリカ人用の、日本人相手には日本人用のパーティーを行うようにはしていますが、アメリカ生活が長くなってきた私達夫婦も慣れてきて、アメリカ人に日本式のパーティーや食事を出したり、その逆をしたりもしています。

パーティーをうまく行える人はビジネスでもうまくいっている人が多いです。ただそれにはやはり夫婦の協力が不可欠です。こちらで成功するには夫婦が仲良くやっていくということが1つの必須条件になると私は考えます。

(本コラムは、過去に執筆した内容に加筆・修正しています)

長谷川滋利

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