アメリカ・ベースボールの起源

今回は「アメリカのベースボールがどのように始まったか?」について述べたいと思います。今シーズン、テレビなどでMLB中継を観たファンの皆さまも、プロ野球を応援しているファンの皆さまも、ベースボールの起源を知っている人は少ないかと思われます。

野球より以前にまずスポーツについて話さなければなりません。もともと「sport」の語源は「disport」(気晴らし)から来ているとされています。ですから、チェスや釣りなどもスポーツとされているのが不思議だったのですが、この語源から見れば納得します。また、遠い昔の話では、気晴らしごとに時間をさけるのは、ヨーロッパでは貴族階級ということになります。一般の人は気晴らしなどしている暇はなかった。スポーツ・イコール・貴族のものであったようです。

ヨーロッパではラクロスなどの団体で行うスポーツが上流階級でプレーされていましたが、アメリカ大陸に渡ってきた移民にそのような上流階級はなく、スポーツを楽しむようなことはなかったようです。その後次第に個人でするスポーツ、乗馬、水泳、ボート、徒歩競争、アーチェリー、サイクリングなどは始まりましたが、団体で行うスポーツは全くといってよいほどなかったようです。

18世紀前後には子供の遊びで、棒切れで球を打つというようなものはあったようです。それらはイギリスで昔行われていた遊びにも似ていたらしい。もともとは靴下などを丸めてボールにしていたようだが、それでは球が飛ばない為に小石などを入れ始めた。その後ボールの形が崩れないように縫い止めたり、中身をコルクやゴムなどに替えたりと様々な工夫がされ始めた。

ニューヨークのクーパーズタウンに行けば、その当時のボールやバットが展示されているらしいです。私は、昔息子の修学旅行のようなものに付き添いでワシントンDCに行ってアメリカンヒストリーは学んできましたが、そこにはベースボールのヒストリーに関するものはなかったです。スミソニアンなどの博物館の人に尋ねるとやはりクーパーズタウンに行かなければならないらしいです。アメリカン・リーグ日本人初勝利と初セーブした私の帽子やベースボール、野茂投手と投げ合った日本人投手 対 日本人投手初対決記念品、イチローとの対戦時の日本人投手 対 日本人バッターの初対決の記念品など、私に関するものも多数展示してあるようなので、1度訪れたいと思っています。

さて、1840年代にはニューヨーク・マンハッタンでボランティア消防団を創設したアレクサンダー・カートライトが、団員の結束を強めさらに彼らの運動不足を解消するにはどうすればいいか考え、タウンボールという現在のベースボールに近い競技を開始した事は様々な書物で記されています。1842年に彼は消防団からメンバーを募り「ニッカーボッカーズ」というスポーツ団を発足させました。どちらかというと、この団体は競技そのものに集中するというよりも、その後のパーティーを主とするソーシャル的な要素が強かったようです。日本でいうところの草野球と、そのあとのビールパーティーみたいなもの。チームメンバーだけでなく、彼らの妻やガールフレンドなども一緒にパーティーを行っていたことを見ると、草野球よりは社交的要素はあったのでしょう。それらが次第に広がって地区別、職種別のベースボールクラブに発展していきました。これらはいずれも親睦のためのものだったようです。

親睦の要素が強いものだったところから始まっても、身内以外のファン、女性のファンなどが増えていくようになればおのずと試合に勝ちたいと思うのが人間の心情。次第にいい選手なら誰でも採ればいいのです。報酬を支払ってもいい選手を獲得しようというふうになります。こうなってくると、ベースボールがビジネス化していくのにそれほど時間はかかりません。最初のプロ野球選手が出たのは1866年。ソーシャルクラブ的に開始されてからわずか20年ほどでプロ化となりました。

それらの初期のプロの話やメジャーリーグの歴史は、今後別の機会で述べるとして、私がここで大事だと思うのは、アメリカ・ベースボールは遊びから始まったというものです。もともとは消防団の運動不足解消、あるいはその他の職業の団結力を高めるために始められたといってよいベースボール。現在のメジャーリーグ・ベースボールの中にもプロスポーツでありながら、プレーヤーにどんな悪い状況でもなぜか悲壮感がないのは、この歴史から来ているのではないでしょうか? あるいはメジャーのコーチがスランプなどで悩むプレーヤーに対して、技術的なコーチングを行った後にいつも「Have Fun」(楽しんでね)と付け加えるのもこの辺りからきているのだと私は思います。


(本コラムは、過去に執筆した内容に加筆・修正しています)

長谷川滋利

▼▼▼▼▼

ゴルファーやビジネスパースンのメンタル強化におすすめ!
オンラインサロン「長谷川滋利のメンタルトレーニング」

https://community.camp-fire.jp/projects/view/319588